年間1,200本の商品動画を少人数チームで制作できた理由
アパレルECサイトを運営するA社(従業員30名)では、2023年まで商品動画の制作が大きなボトルネックでした。新商品を毎月100SKU以上追加しているにもかかわらず、動画制作チームは2名しかおらず、動画があるのは売れ筋商品の一部のみ。「動画があると転換率が2〜3倍になる」とわかっていながら、制作リソースが圧倒的に不足していたのです。
2024年にAdobe Creative CloudのAI機能を全面導入した結果、同じ2名のチームで年間1,200本(月100本)の商品動画を制作・公開できるようになりました。本記事ではその具体的な方法を解説します。
商品動画自動生成の全体フロー
| 工程 | 使用ツール | AI活用内容 | 作業時間(1本あたり) |
|---|---|---|---|
| 1. 商品画像の準備・背景除去 | Photoshop | AIによる被写体選択・背景自動除去 | 2〜3分 |
| 2. 商品説明テキストの動画用変換 | Adobe Express | テキスト→スライド形式への自動変換 | 3〜5分 |
| 3. テンプレートへの当て込み | Premiere Pro | モーショングラフィックステンプレート(.mogrt)適用 | 5〜8分 |
| 4. BGM・ナレーション自動調整 | Premiere Pro | Remix(BGM長さ自動調整)+ Audition AI | 2〜3分 |
| 5. 複数フォーマット一括書き出し | Media Encoder | バッチエクスポートキュー | 設定3分(書き出し自動) |
1本あたりの人的作業時間は約15〜20分。残りは全自動です。
核心技術1:Photoshop AIによる商品画像の高速処理
被写体選択と背景除去の自動化
A社では商品撮影は白背景で統一しています。これをPhotoshopの「被写体を選択」機能(AIベース)で一発切り抜き、動画用の透過PNGとして保存。この工程は以前は1枚5〜10分かかっていましたが、今は自動化スクリプト(Photoshopアクション)を組み合わせて1枚あたり20〜30秒で処理できます。
バッチ処理で100枚を一括処理
Photoshopのアクション機能でバッチ処理を設定することで、100枚の商品画像を一括で切り抜き・リサイズ・書き出しできます。担当者が出社前にバッチを走らせておけば、朝には全商品画像の処理が完了しています。
核心技術2:Premiere Proテンプレートによる動画の工業的生産
商品動画テンプレートの設計思想
A社が最初に投資したのが、After Effectsで作り込んだ「商品紹介動画テンプレート」の開発です。このテンプレートは以下の要素がすべてカスタマイズ可能になっています。
- 商品名テキスト(フォント・サイズ・カラー)
- 商品画像スロット(差し替えるだけ)
- 価格・キャッチコピーテキスト
- ブランドロゴの表示位置
- 季節・セールに応じた背景カラーバリエーション
このテンプレートをPremiere ProのEssential Graphicsパネルから呼び出すと、商品担当者(映像未経験)でも商品画像とテキストを差し替えるだけで30秒CMクオリティの動画が完成します。
核心技術3:Media Encoderによる複数フォーマット一括書き出し
ECサイトでは掲載先によって動画フォーマットが異なります。A社では1本の動画から以下の5フォーマットを同時に書き出す設定をMedia Encoderのキューに保存しています。
- 自社ECサイト埋め込み用(H.264 / 720p)
- YouTube商品動画(H.264 / 1080p)
- Instagram投稿用(正方形 1:1 / 1080×1080)
- Instagram Reels用(縦型 9:16 / 1080×1920)
- TikTok Shop用(縦型 / 圧縮版)
「キューに送信」を押して帰宅すれば、翌朝には5フォーマット全てが書き出し済みになっています。
Adobe Firefly活用:商品のシチュエーション画像を自動生成
A社が2025年から取り入れ始めたのが、Adobe Fireflyを使ったシチュエーション背景の自動生成です。白背景で撮影した商品に、AIが「カフェのテーブルの上」「屋外のナチュラルな雰囲気」などの背景を生成して合成します。
これにより、撮影スタジオやロケを行わなくても、シーン別の商品動画を量産できるようになりました。Fireflyは著作権的にも安全な商用利用が保証されているため、ECサイトへの掲載でも安心して使えます。
導入前後の比較:数字で見るAI効果
| 指標 | AI導入前(2023年) | AI導入後(2024年) |
|---|---|---|
| 月間制作本数 | 20〜30本 | 100〜120本 |
| 1本あたり制作時間 | 3〜4時間 | 15〜20分 |
| 動画あり商品の転換率(平均) | 2.1% | 4.8% |
| 外注コスト(月) | 約45万円 | 約5万円(Adobe CC費のみ) |
小規模ECでも実践できる最小構成
大企業でなくても、以下の最小構成からスタートできます。
- Adobe Creative Cloud コンプリートプランを契約(月額約9,878円)
- Adobe Stockから商品動画テンプレートを1本購入(1,000〜3,000円程度)
- Photoshopのアクションで商品画像の背景除去バッチを設定
- Premiere ProでテンプレートにはめてMedia Encoderでキュー書き出し
初期投資はテンプレート代数千円と月額サブスクのみ。1ヶ月以内に元が取れる計算になります。
Adobe Creative Cloudコンプリートプランの詳細と無料体験はこちらからご確認いただけます。Photoshop・Premiere Pro・After Effects・Media Encoder・Adobe Express・Fireflyがすべて含まれており、EC動画制作の全工程をカバーできます。
まとめ
Eコマース企業がAdobe AIを活用することで得られる最大のメリットは「動画制作の工業化」です。一度テンプレートと自動化フローを構築してしまえば、追加の人件費ゼロで動画量産が可能になります。商品動画の有無が転換率に直結するEC業界では、Adobe AIの活用が競合との差別化要因になります。

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